私が入学した年の早慶戦は、戸田ボートコースで行われました。
対校エイトでは、戦力的に慶應に劣ると思われていた早稲田が、下馬評をひっくり返しての優勝。
しかし当時の私は、対校エイトのクルーが爆発させた、喜びの理由を分かってはいませんでした。
2年前の早慶戦は、隅田川3000mで行われました。
私は3番を漕ぎました。
いつも以上に長い距離に加え、普段以上の荒波にのまれ、腹切りの連続で失速。
1500m地点まで負けていたレースを制したとき、4年生の先輩方が流した嬉し涙が印象的でした。
このときの私は技術的にもまだまだ未熟で、初めての早慶戦の舞台に、圧倒されるばかりでした。
そして去年。
4月とは思えぬ寒さ、更に雨のなかの早慶戦。
そんな寒さのなか、1日中運営に尽力してくださった皆様、
そしてサポートのみんなのためになんとしても勝つ!
そう思って臨みました。
高校時代に大した実績のない私が、
日本を背負うようなクルーに囲まれて漕げたことは、とても幸せなことでした。
大差で勝負を決めたとき、そして岸で喜ぶ同期やサポート陣を見たとき、
早稲田の対校として漕げることを誇りに思いました。
今思えば、早慶戦はいつも私を成長させてくれるものでした。
隅田川で漕ぎたい――。
冬の練習が辛いとき、もう投げ出したいと思ったとき、
早慶戦の存在は私にとって大きなモチベーションでありました。
また、早慶戦は毎年、私に大切なことを教え続けてくれました。
舞台が戸田から隅田川に戻ってきた2年の春。
東北から招待した高校生たちの力漕や笑顔を見て、
毎日不自由なくボートを漕げることは当たり前ではなく、
たくさんの人々の支えの上に成り立っていることを感じました。
第2エイトの大逆転に感動した3年の春。
降りしきる冷たい雨のなか、
コートやカッパを濡らしながら奔走する運営スタッフの方々、サポート陣の温かさを感じました。
早慶戦で漕げることへの感謝の気持ちを忘れてはならないと、胸に刻みました。
最後の早慶戦、4年の春。
今年は諸事情により、再選考を経て早慶戦クルーになりました。
一度は諦めた隅田への切符を手にしたとき、感じたのは喜び、そしてそれ以上に責任でした。
私が早慶戦のシートに座るということは、その分涙をのむ選手がいるということ。
むしろ涙をのむ選手のほうが多いということです。
早慶戦は、運営スタッフの方々、サポート陣、
自分も漕ぎたい思いをこらえて応援してくれるチームメート、観戦に来てくださる方々など、
とてもたくさんの人々の想いがつまった大会だと感じています。
日本一たくさんの想いがつまった大会だから、
日本一有名で、重みがあって、そしてどうしても負けられない。
この4年間で、ここでしか学べないことをたくさん教えてくれた早慶戦。
荒れた隅田川を漕破するのも今年が最後です。
隅田川で漕げることに感謝の気持ちを持って、
早稲田の対校の名に恥じないレースをお見せします。
そして必ず勝ちます。
応援のほど、よろしくお願い致します。
3年 望月みづほ
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